東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)44号 判決
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願商標及び各引用商標の構成及び指定商品並びに本件審決理由の要点が、いずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決は、本願商標及び各引用商標から生ずる称呼、観念の認定を誤つた結果、本願商標が、称呼、観念において、各引用商標と類似するとした点において判断を誤つた旨主張するが、この主張は、理由がないものといわざるをえない。すなわち、当事者間に争いのない本願商標の構成によれば、本願商標は、細い線で描いた縦長の長方形内の上半部に太いゴシツク体で「SEB」の欧文字を書し、下半部に角を少し丸めた正三角形を黒く塗りつぶした図形を配してなるものであるところ、欧文字部分と図形部分の占めるスペースの割合は同一であり、また、欧文字部分は単にアルフアベツトのS、E、Bの三文字を組み合せたもので何ら特定の観念をも有しない比較的なじみの薄いものであるに対し、三角形の図形部分は、簡単で、覚えやすく、親しみやすいうえ、黒く塗りつぶして、顕著に表示され、後記のように、「ウロコ」を表示するものであり、また、これらの点からみて、迅速を旨とする商取引においては、この図形を目印として売買が行われることが少なくないものと推認されるものであるから、本願商標においては、三角形の図形部分もまた、独立して、特定の称呼、観念を生ずるものとみるのが相当である。原告は、本願商標はその全体が一体不可分のものであり、三角形の図形部分は、本願商標の構成全体の美学的なバランスの上からみて、自他商品の識別能力に影響のない単なる付飾的部分にすぎない旨主張するが、「SEB」の欧文字が何らかの観念を有し、欧文字と図形の組合せの全体がひとつの観念を生ずるという特段の事情を認めるに足りる資料はないから、全体を長方形の枠で囲んだ点を考慮しても、本願商標の構成が全体として一体不可分のものであるとはいえず、また、欧文字部分と三角形の図形部分の占めるスペースの割合その他前認定のような看者に与える印象等からすれば、三角形の図形部分が、本願商標の構成において、単なる付飾的な部分にすぎないものとすることはできない。しかして、成立に争いのない乙第一号証の一ないし三によれば、正三角形の図形は、現時、紋章として使用されることは少ないが、会社、団体等の標章、商標としてさかんに使用されており、正三角形の図形からは「ウロコ」(鱗)の称呼、観念を生ずるものであることが認められ、正三角形の図形は、この点において、ありふれた円や四角形の図形とは異なるものというべく、したがつて、本願商標は、その三角形の図形部分から、「ウロコ」(鱗)の称呼、観念をも生ずると認めるのが相当である。一方、当事者間に争いのない各引用商標の構成によれば、引用商標(1)は、黒く塗りつぶした正三角形を描いてなるものであるから、前認定の紋章に関する事実からすれば、「ウロコ」(鱗)の称呼、観念を生ずることは明らかであり、また、引用商標(2)及び(3)は、その構成中の上部の「ウロコ印」の文字から「ウロコ」(鱗)の称呼、観念を生ずるものであるから、これらの引用商標から「ウロコ」(鱗)の称呼、観念をも生ずるものと認められる。
以上説示したとおり、本願商標は、「ウロコ」(鱗)の称呼、観念を生ずる点において、各引用商標と類似するものというべきであるから、本件審決には、原告主張のような認定の誤りはない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。よつて、これを棄却する。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
<省略>